あとがき



　最近、s-okさんやM-Kさん、そして、お二人のHPにある掲示板を訪れる皆さんのHPを読むと、以前にくらべ、送電鉄塔の写真や記述が多くなったように思えます。

　僕としては、より親しみと愛着が湧き、一気にそのレポートを読んでしまいます。そして、まだ歩いたことのないルートでも、地形図とレポートにある送電鉄塔の写真を見比べれば、そのルート概念を想像することができ、楽しませてもらっています。


　そんな送電鉄塔の風景を見ながら歩いたある早春の晴れた昼下がり、僕はボブといっしょに、世附川流域の名もない尾根で、偶然、三椏の黄色の花を見つけました。その三椏は、こんな誰も来ない場所に、一本だけ、誰に見られるわけでもないのに、ひっそりと、でも黄色の花が輝くように、悠然と咲いていました。その見事さに、思わず立ち尽く、時間を忘れて見惚れてしまったことを、今でも、僕ははっきりと覚えています。

　その場所は何もないけれど、そこに行かなければ、その三椏の黄色の花に会うことも、そこにしか吹かない風を感じることもできません。
三椏の黄色の花の思い出


　ボブとの物語は、あの日を境に、次のページに進むことを許してくれませんでした。もう、ボブの肌のぬくもりを手のひらで感じることはできないけど、僕の心には、ボブとの絆というぬくもりが残っています。

　僕が西丹沢や御坂山塊で山歩きをしている時、千の風となったボブは、大きな空を急いで走り、あの頃のように、僕の後を追いかけて来ているような気がしてなりません。
世附の植林帯のボブとポテト


　そう言えば、近頃、サニーのやんちゃな瞳は、ボブの好奇心に満ちたやさしかった瞳に似てきました。そして、サニーが僕を見上げる表情からは、ボブが僕を見つめていた信頼しきったまなざしを思い出させてくれます

「ねぇ〜、ボブ！！僕は、君の知らないサニーと、四季折々の山々を何回か歩いたよ。でも君は、きっと、空の上から、僕らが道迷いしないように、見守っていてくれたんだね！！ボブ、君の思いは、ポテトに、そして若いサニーへと、確実に伝えられているよ。君との山の物語の続きは、サニーに引き継がれているからね・・・」
世附の植林帯のサニー


　世附川流域の山々には、いつまでも変わることなく、静けさが似合う場所であってほしい。そして、三椏の花の輝く黄色のように、ボブとの切なくも温かい思い出が、鮮やかに甦る場所であってほしいと願っています。
早春の浅瀬


天国にいる最愛のパートナー、ボブに、この物語を捧げる


２００７年２月１日
君の山のパートナー　　春さんより


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